老人と砂漠

(2010 ナミビア/ナミブ砂漠)
ナミブ砂漠

ベイサ・オリックスベイサ・オリックス ひたすらまっすぐ続くケニアのハイウェイを走っていたときのことです。  
 道路わきの草むらにひとりの老人が座っていたのですが、ざっと見回した限りでは(ケニア人並みと言われた僕の視力をもって、少なくとも前後左右、数キロ先まで見通した限りでは)、集落はもちろん建物ひとつありません。何か売っているでもなく、家畜をつれているわけでもなく、粗末な服を着て、杖によりかかるようにして、ほんとうにただ老人が座っていたのでした。
 あの人はどこから来て、どこへ行くんだろう――素朴な疑問とともに、僕の記憶に深く刻み込まれている光景です。

 それから7年後、ナミビアの砂漠でベイサ・オリックスを見たとき、僕はこのときの老人をふと思い出しました。

 ところで、僕はエランドやオリックスなど、どうもツノが大きく長いイキモノが好きなようです。フロイトの説となにか関係があるんでしょうかね。